海の響きを懐かしむ

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日用品の文化誌

日用品の文化誌 (岩波新書)

日用品の文化誌 (岩波新書)

【概要】
白物家電からオフィス家具、裁縫用品、コンピュータ、楽器などの日用品をそれぞれのカテゴリに分けて、生活に導入されていったエピソードや関連書籍を交えて紹介している。20世紀の文化様式や生活におけるシステムの図式、最後には「もの」の互換性について説いている。

以下、私の興味/研究に関連のありそうな部分についてのキーワード、気になる点。


【キーワード】

システムとしての「住宅」

ボードリヤール「物の体系」
コルビュジェの「住宅=機械論」
 住宅は機械によって大量生産が可能。それは、人間の生活を様々な行為のエレメント(要素)に分解した上で、「もの」に対応させ、エレメントの関係性を総合的なシステムに組み上げる行為。
フラーの「4D」 「ダイマクション・ハウス」
 病・外界の脅威から身を守るための衛星装置としての住宅


労働の機械化における2つのあり方

  1. 人間のやり方を模倣して目的を達成する
  2. 全く異なった論理によって目的を達成する

たいてい、1からはじまって、2に移行することが多い。洗濯機、掃除機など。まずは手の運動の模倣から入り、その後効率を重視して形が変わっていく。


20世紀の日本における家事(housekeeping)の重要な要素

  1. 経済性
  2. 衛星性
  3. 美観


紙製品(紙コップ、紙ナプキン、トイレットペーパー等)
消費社会のモチーフ
 「アパートの鍵貸します」におけるハンカチーフの取り扱い
 布から紙への変化→清潔さへの欲望が消費への禁欲に勝ったということ


物の保存・保温による時間操作
20世紀の諸技術によって時間軸をコントロール可能になった。
 冷蔵庫・魔法瓶、電子レンジ、インスタント・レトルト食品などの「食」に関するもの
 電気の照明やエアコンなど人工的な「住」環境の構築
エネルギー源の個人所有(灯油ランプなど)から一極集中型へ(電気)
 既存のインフラストラクチャに大きく依存


クレジットという販売方法
ボードリヤール「物の体系」より

ひとびとは物を買うことを夢見て働いている。生活は、努力とその報いという清教徒的世界で体験される。(中略)今日では、物は買われる前にそこにあり、物が表現する努力と労働の相対を予測している。いわば物の消費が生産に成功する。(中略)私はそれらの物を誰かから相続したのではなく、また誰かに相続させることもない。それは物によるもう一つの強制なのである。

北山晴一「おしゃれの社会史」


近代システムと戦争・軍隊の関係性
合理主義による効率化・規格化のすばやい進行と普及。既製服の登場(1820年代から)国民の軍への参加(総力戦)

フランスの仕立て屋の業界雑誌「ジュルナル・デ・タイユール」


スーツの役割
新古典主義フランス革命と産業革命の間(18世紀後半〜19世紀初頭)に登場。
 それまでの衣服の社会的精度が崩壊し、人々はユニヴァーサルな汎用性を求めた。
衣服による「内部人格」の変化
 衣服を変えることは集団的秩序からの逸脱を意味するとともに、自らのあり方を変容させる。新しいアイデンティティの創出。


通信とネットワーク
19世紀から20世紀にかけての絶対的とも言える技術信仰。

SF作家エドワード・ベラミー
 契約を前提とした情報ネットワーク社会
 労働の集約と消費がネットワークの特性によって共有可能

1980年代:電子情報資本主義
 何にでも交換可能である貨幣というメディアに依らず、情報の交換とコーディネーションそして蓄積によって成り立つ資本主義駅な市場システム

マクルーハン「人間拡張の原理」
 インプロージョン:ラジオが人間に与える効果(内側に向かっての爆発)


繋がりの社会性
(上記の単語は本の中には登場しないが、「アーキテクチャの生態系」に出てくるそれとほぼ同等)
情報の意味そのものよりも、それらを同じネットワークの上で共有することの重要性
情報が新しいか否か、共有しているか否かがキーになる


カタログの特性
シアーズ・ローバックのカタログ
 マクロな現実世界をミクロな情報世界にしたもの。情報世界とは加工され、道具として利用し、把握できる世界のこと。マクロ世界>ミクロ世界 という力関係が存在する。

ホール・アース・カタログ
 日常生活(物の評価、利用)という枠組みをカタログに導入。カタログ=世界を知る道具。
 レヴィ・ストロース「プリコール」概念:有り合わせのものを集めて必要なものを作る。文化の部分的集合に目を向けること。記号の集合を組み替える作業。


「もの」
「もの」こそが文化であり、人間の生活環境を取り決めている。また「もの」を通して世界に人間は関わっており、根源的なメディアである。

近代以降の「もの」の特徴=互換性(インターネット用語で言う、interoperability?)
定点の設定による互換性と、互換性による「移動の可能性」

アメリカの役割
 互換性をもった「もの」の生産(インターネットを作り出したのもアメリカだった)


 ウォーラーステイン「ポスト・アメリカ」

文化とは、相対よりも小さなある部分に置ける価値観あるいは習慣のことである。

何らかの普遍的あるいは普遍的な基準なるものを当てはめない限り、文化における価値観や習慣は認知されない。一つの集団のみが保持する価値観は有効性を認められず、一つの集団のみが保持する習慣は価値を認められない。


【読後の所感】
最初のほうの、白物家電の話をもっとしてほしかった。途中の楽器やオフィス家具のはなしはさらりと読んだ。興味深いところはいくつもあったのだが、最後のほうは中途半端にメディア論に触っていて、散漫な印象。ともあれボードリヤールは読まねば、という気持ちになった。またフラーの思想をおさらいする必要を感じたので、「宇宙船地球号〜」を読み直した。それについては、次のエントリで。