海の響きを懐かしむ

観たもの聴いたもの読んだものの記録と、日記など

赤毛のアンを音でふりかえる(その2)

アンの娘リラ―第十赤毛のアン (新潮文庫)

アンの娘リラ―第十赤毛のアン (新潮文庫)


第十巻は、それまでのほのぼのとして平和な世界観から、第一次大戦の影響をもろに受けた構成になっている。最終巻ならではのクライマックスがある訳でもない。

十巻が紛れもなく異色なのは、海のむこうの、戦争、という出来事を感じながら、それでも今までとおなじく家事や子育てという「ふだんの」「暮らし」を続けているところ。夢と恋と多少の不安でできていた美しい「アン」の世界に、はじめて現実が入ってくる。もちろん、それまでのお話の中でも登場人物たちが現実にぶつかり、悩み、成長していくのだけれど、それとは別次元のリアリティが十巻にはある。そして、ひたひたと迫る哀しい現実と、目の前の、それまでどおりの日常生活とが共存する。

この浮遊感。いまのわたしたちにきっと似ている。つまり、自分が世界の一部であることを自覚するってことだ。

このタイミングで「アンの娘リラ」を読めたことはきっと偶然じゃない。そしてアンの物語は、永遠に終わらない。