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映画『サルトルとボーヴォワール 哲学と愛』公式サイト
渋谷に監督失格を観るつもりで行ったらちょうどやっていなくて、かわりに「サルトルボーヴォワール 哲学と愛」を観てきた。映画館にはひとりで来ている年配の男性が多かった。

二人のどこからがフィクションかはわからないけど、ぱっと見ちぐはぐな二人は、運命の双子みたいなものだったんだと思う。お互いを補完し合うけれども、ぴったり重ならない貝のような。完全な円にはならず、はみ出るところがあるからこそ、危ういバランスでその関係を続けることができたんだと思った。

ボーヴォワールの「永遠の関係性には貞節が必要よ」という台詞があって、名前のない関係は維持のためのコストが高い、というid:yucaさんの言葉を思い出した。個人に対して自由という性質を与えようと主張するサルトルに対して、ボーヴォワールは個人ではなく関係そのものに貞節を求めることで自分を自由にしようとした、そんな風に思った。くだらない小市民にならないために、嫉妬にまみれた醜い女にならないために、交わりを拒否すること。そしてそれを受け入れること。こんなの並大抵の労力じゃできない。二人をそこまでして突き動かすものは何だったんだろう。そんなことを考えながら観ていた。

途中、ふたりが上着を来たままベッドの上で無言で抱き合う場面が、とてもよかった。あの数秒に、この映画のすべてが詰まっていたと思う。