海の響きを懐かしむ

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ある父親―puzzle

ある父親―puzzle

ある父親―puzzle

 

 

知人におすすめしてもらった、シヴィル・ラカンの『ある父親』を読んだ。

 

これは、精神分析医のジャック・ラカンの娘である彼女が、望まれなかった自らのいのちや、父母との関係からうまれる苦しみ、そして自身の心の病、といった重たい話題について語った、とても短い手記である。

 

終始痛みに満ちているにもかかわらず、その文章は水晶のように清冽とも言えるものだった。読み終えた時「かわいそう」という気分にはならず、かといって前向きなメッセージを受け取るわけでもない。仏語の原題"Un père"(あるひとりの父親)にはっきり示されているように、factに対して極度の感傷に陥らない、客観的な姿勢には深く共感した。私達が、唇をきゅっと噛んで現実を直視するあの感じに、とても似ていた。そしてパウル・クレーの表紙がまた良い・・。

 

良い本なのに、絶版になっているようで残念。加えて大学の図書館にも蔵書がなく、とても勿体無い。「パズル」というサブタイトルの通り、記憶の断片をひとつひとつ掴むような書き方なので、決して読みやすくはない。けれども、後世に残されるべき本だと思った。

物理的に私に近しい方には、喜んでお貸しします。