海の響きを懐かしむ

観たもの聴いたもの読んだものの記録と、日記など

蓼食う虫

谷崎潤一郎「蓼食う虫」を読んだ。最近、夜まで大学にこもる生活が続いているので、少し生活に刺激を与えるつもりで谷崎でも、と手にとった。予想以上に面白く、通学する行きと帰りの電車のなかで一気に読み終えてしまった。

 

離婚しようとする夫婦が、具体的な行動を起こさずその時が来るのを待つ話。pragmaticの真逆をゆく。女の気持ちも、男の言い分も、よくわかるから恐ろしい。少なくとも谷崎の世界において、男尊女卑と女性崇拝は紙一重であって、それと溶け合うことのできない「おんな」のあり方とのあいだに、ふかい諦念を感じた。

 

「つまり君のはただ君自身の心持が悲しいんだよ。事実は君が感じるほどに悲しくはないんだ。」

「だって、悲しみというものは結局みんなそうなんじゃないか、どうせ主観的なものなんだから。」

谷崎潤一郎「蓼食う虫」新潮文庫 P.58

 

これもまた、truthとfact、realityの物語だった。

蓼喰う虫 (新潮文庫)