海の響きを懐かしむ

観たもの聴いたもの読んだものの記録と、日記など

夢の中

倫敦塔・幻影の盾 (新潮文庫)

倫敦塔・幻影の盾 (新潮文庫)

夏目漱石というひとは、漢詞とシェイクスピアに精通した、極上のエンタメ作家だということを痛感。圧倒的に面白かったのが「一夜」、ついで「趣味の遺伝」。
一夜。人間が、三人以上いて、そこにはじめて社会が生まれる。役割が生じる。秘密という強さが存在しうる隙間ができる。時間軸を無視した狭い空間のなかで、起こるものごとは夢そのものだ。色気とも何ともつかない魅惑的な何かが、10ページ弱のなかに溢れていた。

また表題作にある、がむしゃらな生の渇望には、漱石の意外なアツさを垣間見たようで胸が打たれた。ひょうひょうとしたクールさの中から熱風が吹き出したようで。