海の響きを懐かしむ

観たもの聴いたもの読んだものの記録と、日記など

怖るべき は わたしたち

怖るべき子供たち (角川文庫 (コ2-1))

いい意味でタイトルに裏切られた。

もっと、「悪童日記」にあったようなチャイルディッシュで無邪気な残酷性や、「ジェローム神父」のような人間の真の"自然"な状態についての話かと思っていた。もちろんそういうことがテーマとして掲げられてはいるのだが、個人的には、それらよりもっと<おんな>に焦点を絞った話のように思えた。

コクトーがどこまで意図していたのかはわからない。けど女性の、一見全く論理の筋が通っていないように見えて、実は本人の中ではひとつひとつがすとんと整理されているあの現象について考えてしまう。情動と快楽が縺れ合って、ぐしゃぐしゃの毛糸玉みたいになりながらそれでも切れずに続いているあの感じ。エリザベートの残忍で奇怪に見える行動は、ちっとも珍しいことじゃない。共感ともちょっと違う、なんともいえない当事者性を感じた。

 

 

彼女は叫んだ。

—お食べ、お食べ。

アガートは逃げ出した。ポールは飛び上がって顔を隠した。

—それごらん、これが無自覚なの。これがヒロイズムなの!

エリザベートは息をはずませながら嘲笑った。

(「怖るべき子供たち」 角川文庫 P.134-135)

 
 
※追記
作中のある部分から、非常に「トーマの心臓」に通じるものを感じたので、なるほどこれが元ネタか、と思っていたら実際に萩尾望都先生が漫画にしていたことを知った。繋がっていますね。