海の響きを懐かしむ

観たもの聴いたもの読んだものの記録と、日記など

ボルヘスとソンタグ(引き続いて「行動について」)

ブロディーの報告書 (岩波文庫) 夢の賜物

 
先日、友人が「なぐさめてもらいたいからボルヘスを読む」と言っていて、それはすごくわかるなあ、と思った。彼の文章は、優しい。あっさり素朴な醤油ラーメンみたいに、生けるものへの慈愛の眼差しに満ちている。本書は他の短編集に比べて、一見不条理でリアリスティックな話が多いけれど、そういった部分は変わらないと思った。
 
 
 
あるできごとを告白するのは、その行為者たることをやめて証人となることだ。できごとを見、語るが、実際に行った者ではない人間になることだ。(『グアヤキル』P.119)
 
 
それからソンタグの処女小説『夢の賜物』を読んだが、こちらは難解だった。夢を鍵とした物語展開は漱石『夢十夜』を思いだしたけれど、主人公の行動に夢からの直接的な影響はなくて、むしろフロイト的な夢の使い方を意図的に回避している感じがした(これは訳者もあとがきで述べてる)。少々不条理めいている部分はカミュやイヨネスコの影響も感じる。サルトルの嘔吐を読むべきと思った。
 
 
「僕が何かを信じている、または、僕が何者かであるとしたら、僕はその何かを行為を通して突き止めたいと思う。信じていること、あるいは、自分は何々であるということ、それが先に決まっていて、それに合わせて今の僕の行動があるのではないし、そんなのはいやだな」(『夢の賜物』P.234)
 
 
 
 
あと原著にはあたっていないけど、木幡和枝氏による訳が良いのだろうと思う。元タイトルThe Benefactorの本著もだし、Rebornを『私は生まれなおしている』とするセンス、とても好きです。それからソンタグ赤坂真理さんも、デビューが30歳前後で、それには結構、勇気づけられる。
 
※追記 抜書きした部分がシンクロしていてすこし驚く。やっぱり「行動」がテーマだ。