海の響きを懐かしむ

観たもの聴いたもの読んだものの記録と、日記など

ゆるがないの (?)

性別年齢問わず、ある関係に色をもたらしたい時、すきな小説はなに、と尋ねるのが好きだし、実際効率がいい。そのくせ、いざ自分に同じ問いを向けられてみてもとっさには答えられない。だって『桜の森の満開の下』と『ドリアン・グレイの肖像』と『きもの』を愛でていたわたしは、いまの彼女とちょっと違うのだ。その証拠に、汗が染み付いた文庫本たちは既に手元にない。


百鼠ということばがあるように、likeもpreferもloveもadoreもすこしずつ次元がズレている、それらが重なり合う瞬間に出会えたとき幸せを感じる。そのズレが、生命の一部を共有するひとびととの間にあるのならばなおさらだ。ある種の無邪気さを持って歩み寄るためには、時には個人の努力も必要なのだと理解できる程度には、わたしはおとなになった。


プリズム (創元推理文庫)

プリズム (創元推理文庫)

二十世紀旗手 (新潮文庫)

二十世紀旗手 (新潮文庫)

ああ、今なら言える。わたしは心から太宰作品を愛せなくって、それは湿ったたましいの裏側の皮をめくっては曝すようなものだってことを。