海の響きを懐かしむ

観たもの聴いたもの読んだものの記録と、日記など

先端の恋人たち



『三四郎』を読んだ。

なんか、拍子抜けするくらい、エリート童貞青年のモラトリアム恋物語(意訳)で、なかなかどうして、おもしろかった。舞台が現代でも全然いける。今で言うと、大学入りたての頃、やたら意識高い友だちとなかよくなって、流されるままビジコンとかの界隈の人たちと親しくして、ネットで意識高い活動に足を突っ込んで、案の定失敗して、って感じかな。うっかり恋みたいなものもしちゃって、でも若すぎるせいで恋情を表出するボキャブラリイは全然なくって、もじもじしてるうちに時だけ過ぎて。黒船来航から1世紀半たっても、百年そこらで人は変わらないのだという現実を実感する。おかしくも、かなしい。


彼らは、明治というその時代を一生懸命に生きている。なんだかそれが愛おしい。それで翻って自分はどうかしらと、前野さんのアルバムを聴いたりして、やっぱり2013年を精一杯生きたいなと思う。時代の先端に立って呼吸をしていたい。“いま”の空気を吸って、排泄する、それだけだってきっとポジティブで生産的なことだ。


「それからその女にはまるで会わないんですか」
「まるで会わない」
「じゃ、どこのだれだかまったくわからないんですか」
「むろんわからない」
「尋ねてみなかったですか」
「いいや」
「先生はそれで……」と言ったが急につかえた。
「それで?」
「それで結婚をなさらないんですか」
 先生は笑いだした。
「それほど浪漫的(ロマンチツク)な人間じゃない。ぼくは君よりもはるかに散文的にできている」
「しかし、もしその女が来たらおもらいになったでしょう」
「そうさね」と一度考えたうえで、「もらったろうね」と言った。
夏目漱石 三四郎


三四郎 (新潮文庫)

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オレらは肉の歩く朝

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