海の響きを懐かしむ

観たもの聴いたもの読んだものの記録と、日記など

上がったり下がったりしながら、ちょっとずつのぼっていく

明るい方へ 父・太宰治と母・太田静子 (朝日文庫)

 

 

モリマリとか、コウダアヤとか、シヴィル・ラカンとか、二世作家を好きなのは、彼女らが父を語ることに伴う感情、その動きを観察できることに因る。肉親、とくに父親の生き様を物語るということは、そのまま(むすめが生きる)社会を語ることになる。それはどうしたって恥ずかしい行為でもあって、だから心は揺れ動く。突き放したり、陶酔したり、また戻ってきたり。生まれて最初に出会う忌まわしい異性、それがわたしたちにとっての父そのものだ。

 
おだやかな著者の目は冷静に父と母をとらえる。意図的な他人行儀も感じるが、それは正妻ではなく愛人の子という彼女なりの「わきまえ」なのかもしれない。この本は太宰治と太田静子が本質ではない。著者はふたりを通して、自分の人生にある意味ケリをつけたのだ。そこに揺さぶられた。明るい方にのぼっていくのだ。