海の響きを懐かしむ

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Sophie Calle『どうか元気で(Take care of yourself)』の手紙 写経

アーティストと翻訳者と、そして筆者である「彼」に敬意を込めて
ソフィ・カル《どうか元気で》1分でわかる「LOVE展」~アーティスト&作品紹介(12): 森美術館公式ブログ


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ソフィへ

メールの返事を書こうとしているうちに、ずいぶん経ってしまった。直接話して、はっきり口で伝えたほうがいいとも思っていた。
とにかく、書く。
気づいていると思うけれど、最近の僕はおかしい。自分が本当に存在しているかすらわからないくらいだ。不安でどうしようもない。これまでの自分だったら、それでも前に進み続けてやがて感情をコントロール出来た。けれど、今はダメだ。僕らが付き合い始めたとき、君は「あなたの『四番目の女』になる気はない」と言った。僕はその約束を守ってきた。他の三人とはもう何ヶ月も会っていない。君も「他の女たち」の一人に過ぎないと思えば、彼女らと会うことも出来たんだろうけど。
十分だと思ってた。君の愛があれば、君と一緒にいるだけで、この不安―――こいつのせいで僕はいつまでも何かを探し求めて一生安息出来ず、幸せにもなれないし、自分を解き放つことが出来ない―――も消えると思っていた。君の愛は僕にとって最高のものだから。僕は書く事で癒され、不安を文章の中に溶かし去り、また君を愛せると思っていた。だが、そうではなかった。実際今はもっと不安だ。自分のこの状態をうまく伝える事さえ出来ていない。だから、僕は今週、「他の女たち」に電話をかけ始めた。これが自分にとってどういう意味を持つか、これからまた自分がどんな悪循環にはまって行くかもよくわかっている。
僕は君に嘘をついたことは今までに一度もないし、もちろんこれからも嘘をつこうとは思わない。
僕たちが付き合い始めるときに君が出したもうひとつのルール、それが「別れたらもう二度と会わない」だった。そうだよね?このルールは僕にとって悲劇であり、不公平だけれど(だって、君はまだBともRとも会ってるじゃないか……)もちろん理解は出来る。だから、僕たちはもう友達にはなれない。
今、僕は君の言う通りにすると決めたんだ。この決心が僕にとってどれだけ大きなものかわかるかい?君に従うことで、僕は沢山のものを失う。君と会うことも話すことも、君が人や物を見るときの仕草を真似することも、君の優しさを感じることも。本当につらいことになるだろう。
これからどんな顛末を迎えようと、僕は、初めて会ったときから変わらない自分のやり方で君を愛し続ける。それを覚えていて欲しい。
今はもう、二人ともよくわかっているように、お互いの愛・・・・・・この愛こそが、僕たちの間に起こったすべての出来事の証だし、僕たちの関係が世界にたったひとつしかないことの証明だ。だからこそ、君はごまかすべきじゃない・・・・・・この愛ではどうにも修復出来なくなってしまったこの関係を、ずるずる引きずるのは最悪だ。
こんな結末を僕は望んでいなかった。
どうか元気で。

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Take Care of Yourself