海の響きを懐かしむ

観たもの聴いたもの読んだものの記録と、日記など

メデイア

スクリプトの中の時間の流れがとてもゆっくりで、たぶん実時間にしたら10時間ちょっとのことを、今のわれわれからしたらひどくゆっくりに進めている。ギリシアの時代にはきっと時計というものがなかったのだろう、現代人が同じ発想でこういう物語をつくるならば、もっと場面展開が激しいものになりそうな気がする。


メデイアは最初から沸点に達していて、ずっとそれが持続している。彼女は最後まで変わらない。人が変わる、ということは、その人がいる社会が変わるということとほぼ同義なように思う。だとしたら、メデイアの世界には最初から社会などなかったのではないか。2人以上の人物が登場しても、societyが立ち上がらない世界。古代だ。


ひとつ不満な点があった。メデイアは文字通りの狂気という名の愛を夫・イアソンに投げつけるが、かんじんのイアソンが、魅力的な男に思えない。自分が女ということを差し引いて見ても、筋肉だけが取り柄の体育会系男子に見えてしまう、言ってしまえば、イアソンからはあまり知性が感じられない。メデイアは頭のいい女性のはずなのに、どうして家族を殺してまで彼に恋したのか、どうにも検討がつかない。つまり、メデイアは神(父)に授けられし力を持つ特別な存在でありながら、女としては平凡だということだ。逆説的に、それが人間らしくて愛おしい気もするが。

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