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海の響きを懐かしむ

さみしくはない

『ディアナとニンフたち』

以前オランダのマウリッツハイス美術館に行った。日本人がとても多かった。ドールハウスみたいなちいさな建物で、みんなのお目当てはもちろん「真珠の耳飾りの少女」だった。

 
日本ではあまりお目にかかれないあのヨーロッパ独特の、絨毯が敷かれたひくい階段を登り、手前の方の小さな部屋にそっとそれはあった。入ってすぐ手前左側の黄色い壁に彼女はいて、向かいには「デルフト眺望」が凛々と佇んでいた。鑑賞者の興味はほぼその二つに注がれていたが、右側の壁にはもう一つ、大きな絵画が存在していた。
 
暗くてほとんど見えない女たちの顔、ふくよかに肉付いた流れるような身体、なによりもそれ自体の大きさが、あの空間を満たしていた。地味ながらその存在感は大きくて、あの部屋には、三つの絵画どれが欠けてもいけないのだった。そういう緊張感が、あの部屋に独特なポップさを匂わせることに成功していた。稀有な空間だと思った。