読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

海の響きを懐かしむ

さみしくはない

再会

17歳くらいの時、東京都美術館に『オルセー美術館展』を観に行った。たしか一度目の大学受験が終わった頃で、やわらかい日差しの中の上野を歩いた記憶がある。今よりも圧倒的にひとりで、悩みも深刻だったけど、今思えば一人遊びのひとつひとつが豊かだった。


ヴァロットンの『ボール』は、そんなに大きくないのにもかかわらず、塗りつぶされた深緑色に釘付けになったことをよく覚えている。あと、手前の赤いボールと、奥の緑の不安な対比。胸をカンカン鳴らした、あのざわつき。だから半年前の旅行で、シャルル・ド・ゴールの入国への通路でその緑色に再開した時、ぎょっとした。その時数年越で、ヴァロットンという画家の名前を認識した。

反対に、上野の春の印象とともにあったのがベルト・モリゾの『ゆりかご』だった。繊細なレースと、それにつつまれた赤ちゃんと、見守る女性の服のブルーが....とここまで考えて、ギャップ的なもの、違うものが一つの枠に同居することがやはり好きなのだと気づいた。


奇遇なことに、今夏、再びこの絵画たちに出会うことができた。こんなことは、日本でしかあり得ない。このペースで巡回してくれるのならば、30代になっても40代になっても、わたしは「対比」の中をさまよえるだろう。それってなんだか希望がある。物言わぬモノとの再会だ。

それにしても、「再会」までの間にわたしはオルセーを訪れているはずなのに、彼らを見かけた記憶がない。時間のない中、お上りさん根性のままに「ムーラン・ド・ラ・ギャレット」や「落穂ひろい」などを貪り観たことしかおぼえていない。結局、短い旅の間には、本当に観たいものなど視えないのかもしれない。


ヴァロットン展 ―冷たい炎の画家 三菱一号館美術館(東京・丸の内)

オルセー美術館展 印象派の誕生 -描くことの自由-/2014年7月9日(水)~10月20日(月)/国立新美術館(東京・六本木)