読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

海の響きを懐かしむ

さみしくはない

映画の「教養」

以前、テレビで『ベン・ハー』が放送されているのを観た*1
超歴史大作だけれども、それまで観たことがなかった。


いや、本当はそれは嘘で、
高校の世界史Bの授業で断片的に観たことがあった。
その授業は先生がたいへんにおもしろい人で、教科書通りでない、受験勉強には役に立たない
本当の歴史の文脈を教えてくれる人だった。


授業では、その時代や国を取り扱ったまんがや小説も取り入れたプリントが配られていたのと、
有志参加の課外授業ではひたすら映画を観た。
『十戒』や『戦艦ポチョムキン』(音がなくて辛かった)、
タイトルはもう思い出せないけれどアーサー王ケルトを舞台にした80年代の映画、
アッシジのフランチェスコを描き、フェリーニも脚本参加している『神の伝道師 フランチェスコ
などなど…。


ベン・ハー』も、授業のなかで観た。
3時間もある作品なので、すべてではなく
先生が見せたいシーンを端折って見せてくれた。
ローマ帝国による幽閉・尋問や、奴隷労働、特に奴隷がガレー船を漕ぐシーン。
そして(顔はうつらない)キリストが、ゴルゴダの丘をのぼる様。


10年経って、そうしたシーンになつかしさを覚えるとともに
改めて頭から観ることで、こういうお話だったのか、と発見がたくさんあった。
なかでも、最も有名な、戦車レースのシーンには息を飲んで見入っていた。
フィクションを超えて、肉迫しているというか、スリルそのもので
しかも長い(15分...)とんでもない映画だと思った。


それから一月後、スター・ウォーズ フォースの覚醒が公開された時、
金曜ロードショーでエピソードⅠを放送していて、
私はこれを実家で家族と観ていた。


今観るとCGがチープだったり、世間的にはチャンバラが少ないとか
色々言われているようだけれども、
自分にとってはこれが映画館で観る「ファースト・スター・ウォーズ」だったので
思い出深く、楽しく観ていた。


家族とああだこうだいいながら観ていた矢先
物語の中盤の見せ場である、アナキンのポッド・レースの場面になった時
冷水を浴びたように、はっとした。


全速力で飛ばしながら、命を賭して拮抗するポッドが
ベン・ハー』の馬戦車そのものだったのだ。
混乱しつつも、直感で「これはオマージュだ!」とわかり
興奮して家族に伝えたけれど、誰も取り合ってくれず、
急いでググると、確かにルーカスによる元ネタ/オマージュであるらしいとわかった。


こういう時、とてもうれしい。
トリビアに気づけたという小さい俗物根性だけではなくて
自分の中を通り過ぎていった作品が、ばらばらの棚に収められていたのに
記憶を頼りにたがいに作用して、実はつながっていることに気づく。


映画だけじゃなくて、小説でも、音楽でも、、
そのつながりが、世間一般に認知されていなくても、
それが自分の中で確かに熱を持っているのであれば
時には勘違いや誤謬だとしてもかまわない、と思う。
宮﨑駿さんも「誤謬をおそれるな」とまんがに書いていた。
今日の生活には全く役に立たない脳内地図を、自分自身の中からひきずりだすこと、
そういう遊びを「教養」と、ひそかに私は呼んでいる。