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海の響きを懐かしむ

さみしくはない

ジーン・リース『サルガッソーの広い海』

読書

やっとジェイン・エアを読み終えたので、『サルガッソーの広い海』に手を出すことができた。
これは『ジェイン・エア』に登場する人物・アントワネットを主人公に据えた物語なのだけれど、
それを知ったのは最近のことで、タイトルに前からずっと惹かれていた。
どんなお話なのだろう、サルガッソー海はどんなふうに描かれるのだろうと
ずっと頭の隅にあった本。


ジーン・リース西インド諸島のイギリス領出身というプロフィールで
物語の舞台は19世紀のジャマイカ。

海は、ほとんど登場しなかった。
むしろ熱帯の島のうんざりする空気、華やかさがもたらす倦怠感が
じっとりと物語の全体を覆っている。

ジェイン・エア』は、自立した乙女の気高さで包まれていながらも
骨組みはわかりやすい成功譚・メロドラマでできている。
リースはそのわかりやすさの裏を付き、サルガッソーの広い海が隔てる<断絶>
つまり植民地と本国の関係、をあぶりだす。

だけど、そういう非対称性は実は重要ではなくて、
ジェイン・エアと同じように、女の人の気高さの物語だと感じた。
気高さによって幸せにもふしあわせにもなれるということ。


ジェインとアントワネット。
彼女たちと結ばれる男性として、ロチェスター氏という人物が登場するけれど
両書を重ねあわせても、決してこの男性の物語にはならない。
ふたりの女性の精神は、大西洋を越えて接続される。