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海の響きを懐かしむ

さみしくはない

『ナショナル・ストーリー・プロジェクト』

ナショナル・ストーリー・プロジェクト〈1〉 (新潮文庫) ナショナル・ストーリー・プロジェクト〈2〉 (新潮文庫)

「誰かがこの本を最初から最後まで読んで、一度も涙を流さず一度も声を上げて笑わないという事態は想像しがたい」。元はラジオ番組のためにオースターが全米から募り、精選した「普通の」人々の、ちょっと「普通でない」実話たち――。

少女の日のできごと、戦時中の父の逸話、奇怪な夢と現実の符合。深刻だったり、たわいもなかったり、茫然とするほどの暗合に満ちていたり――無名の人々が記憶のなかに温めていた「実話」だけが持つ確かな手触りを、編者オースターが丁寧に掬いとる。

新潮社ウェブサイトより)


かなり前に一度読んで、途中でやめた本。
その時何歳で何をしていたのか、全く覚えていないけれど、要するに余裕がなかったんだろう。
読み飛ばすことができなかった。
涙も流さなかったし、爆笑もしなかったけど
こういうものがつるっと読めるようになり、わたしも年を取った。


ちょっとした「いい話」や、ふしぎ体験、たまに悲しい話が続く。
要するにアメリカ的ユーモアが金太郎飴のようにぎっしりつまっている。
(わたしは、アメリカンジョークが苦手で、どこがおもしろいのかわからない)
だから感心しつつうんざりするのだけど、2巻になってからがおもしろかった。
特に最終章「瞑想」のセクションが恐ろしく素晴らしい。


瞑想とはつまり、日常の意識の流れであり、生活に潜む幽玄を見つめることだ。
ドリーミーで、ゆらいでいて、凪いでいる。
人が、自由で静謐なこころのあり方を獲得すること。その方法について。
こんな文章を一般の人が書き、それが本になってしまう、アメリカという国がうらやましい。