海の響きを懐かしむ

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『タンゴ・レッスン デジタルリマスター版』

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予定していた映画のチケットが取れずヒマになり、かわりに恵比寿で『タンゴ・レッスン』を観てきた。なんともまあ、素晴らしい映画。


大きなストーリーとしては、映画監督であるサリー・ポッター自身が、アルゼンチンのダンサー・パブロにタンゴを習うというお話。サリーは新作映画の脚本を書き上げるべく、タンゴにインスピレーションを見出そうとする。どんどん踊りが上達する彼女に、パブロはパートナーとして一緒に舞台へ上がるよう提案する。タンゴを通してふたりの関係は変わっていく。


まず色々置いといて、ふたりの踊りが素晴らしい。アルゼンチンのダンスホールで、パリのセーヌ河岸で、誰もいないスタジオで、二人は踊り続ける。サリーはタートルネックのセーターにベルベットのプリーツスカートといった出で立ちで、いわゆる女性ダンサーの衣装と違って肌の露出を控えめにしている。まさに英国の貴婦人という様で、ターンするとプリーツが絶妙な揺れ方で広がる。それが息を飲むほど美しい。


官能的でセクシャルな二人の関係だけど、キス以上のことは無く、ただ会話し、踊るだけなのが良かった。終始不安感や、男と女の濃密さがいやというほど伝わってくるものの、全然嫌らしくなく、破滅的な気持ちになることもない。


サリーもパブロも本人役のため、まるでドキュメンタリーのようだけど、これはれっきとした”映画”だ。どこまでが本当でどこからが嘘なのか区別がつかなくなってくるが、これこそが映画の本懐という思いがした。「リベルタンゴ」「懐かしのブエノスアイレス」などの有名曲とともに、踊るふたりを見つめていると、脳がだんだん倒錯してくる。夢だろうが現実だろうがどうでもよいから映画なのだ。


こんなに素晴らしいのに、DVDは絶版で、レンタルビデオ屋にも置いてないというのが、もったいない。