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海の響きを懐かしむ

観たもの聴いたもの読んだものの記録と、日記など

青い森

新しい須賀敦子


須賀敦子さんという、文学インテリ女性の極みのような人がいる。その人についての本の中で、彼女が"お父さんから「鷗外の史伝を読まなきゃなんにもならない」と言われた"と書いてあって(インテリ発言だ)、それまでほとんど無視してきた鷗外という存在が、ここ数年気になるようになってきた。


山椒大夫・高瀬舟・阿部一族 (角川文庫)

よく考えると漱石はまあまあ好きであっても、鷗外は高校の授業の『舞姫』止まりで、他は全く知らない。調べてみると『舞姫』は20代の若い頃に書かれた、まだ作家としては駆け出しの頃の作品であるらしい。全然知らなかった。次に『山椒太夫』や『安倍一族』を読んでみたら、これが文学としか形容できないすばらしさで、なるほど鷗外の歴史小説とは、既に過去になっていた武士の論理から、犠牲心や慈愛の精神をあらわしているのだなあと思い至った。


渋江抽斎 (岩波文庫)

それから満を持して読み始めた『渋江抽斎』は、一月かかってやっと一昨日読み終えることができた。なにせ言葉が難しく、iPhone日本国語大辞典アプリを片手にひたすら文字を追う毎日。でも、めちゃくちゃ面白い。渋江抽斎という故人や、その周辺の人々の出生・生き様を、ここまで調べ上げる情熱がすごい。ネットもない時代に、一人でNHKスペシャルみたいなことをやっている。探偵みたいに古書店を歩き回って、存命の関係者にインタビューして...。特に抽斎の没後、家と子どもたちを守った妻のエピソードが力強い。


須賀さんのお父さんがこの本を勧めた理由も、この女性の勇気あふれる生き方を伝えたかったからじゃないかな、と思う。また読んでいる最中に、舞姫の主人公をボコボコにする記事を読んで、抽斎の息子がへんな本を色々出していたというのも知れて、タイムリーだった。


津軽 (角川文庫クラシックス)

渋江抽斎』は江戸後期の江戸と弘前が舞台の話だったので、青森繋がりで太宰治津軽』も読んでみた。太宰さんの場合、小説よりもエッセイのほうが、なよなよした「太宰っぽさ」がいい感じに中和されて、するりと読みやすくなる気がする。中盤、実家を尋ねるくだりが、作者の素朴な心が伝わってきて特に良かった。


この二冊ですっかり、青森という土地に見せられてしまった。いつか東北新幹線に乗って行ってみたい。矢野顕子スーパーカーという、私的二大アイドルを生み出した場所としても偉大な土地であったことも、思い出した。



SUPERCAR 『PLANET short ver.』