海の響きを懐かしむ

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日本語吹き替え版、という世界の広がりについて(ファンタビとくるみ割り人形によせて)

最近、「ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生」「くるみ割り人形と秘密の王国」という映画を観た。どちらもワーナーとディズニーの冬の大作映画で、一度だけでなく二回、三回と繰り返し鑑賞した。

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自分はこの二作を観て、ひどく感動してしまった。普段放置しているFacebookに感想をアップしてしまったほどだ。ビジュアル、役者の演技、CGのクオリティ、音楽のすばらしさ、どれをとっても最大級の良さだったのだが、それ以上に印象深かったのが、日本語吹き替え版が素晴らしかったことにある。


とりあえず一度目は字幕版を観るわけだが、そのあとに吹き替え版を観ることで、字幕を追っているだけではわからない、細かな演出や俳優の表情に集中できる。これだけだと、英語を理解してそのまま観ればいいじゃないかという話になるが、そうじゃない。吹き替え声優さんの演技力の高さに感嘆したのだ。


「ファンタビ」では、押しも押されぬ人気声優の宮野真守さんという人が、主人公の声を当てている。最初はただのアイドル枠だと思っていたが、それだけではない。いわゆる甘い声というだけではなくて、エディ・レッドメインが発する主人公の、ちょっとシャイで優柔不断な感じが、吹き替えの声にあふれているのだ。


もっとすごかったのが、「くるみ割り人形」に出演していた坂本真綾さんだ。キーラ・ナイトレイが演じるシュガー・プラムというお菓子の妖精の声を当てている。映画を観てもらえればわかるが、この妖精の声はかなりおもしろくて可愛いしゃべり方をしている。かん高くて、甘ったるく、少しマリリン・モンローも入っているような感じだ。坂本さんは、このキーラの話し方を、日本語のニュアンスで完全に再現している。自分はこの映画を字幕で2回、吹き替えで1回観たが、坂本さんの演技を観に、吹き替えでもう一度見たいと思っているほどだ。それほどまでに彼女の演技が素晴らしかった。


坂本真綾さんと言えば、歌にアニメ声優にとマルチに活躍している人だが、自分のファーストコンタクトは、「スターウォーズ ファントム・メナス」でのパドメ女王の吹き替えだった。ナタリー・ポートマンの可憐さと透明感を、あれほど声だけで表現してみせる人は他にいない。わたしにとっては、洋画吹き替えのミューズが坂本さんなのだ。


と言っても、少し前まで、吹き替え版には完全に偏見を持っていた。演技が下手なアイドルやお笑い芸人たちが声を当て、客寄せパンダになり、作品をかえって台無しにしている———そんなイメージを持っていた。今でも、そういう作品もあると思う。しかし、ワーナーとディズニーという巨大企業が予算をかけて作った吹き替え版を観て、そういう作品ばかりではないのでは?と思い始めた。


話は少し変わるが、自分は昔の映画によくある、オリジナル邦題が結構すきだ。ウォン・カーワァイの「恋する惑星」の原題は「重慶森林/Chungking Express」で、恋するのコの字もない。でもこのタイトルのほうがずっといい。昨年、「Hidden Figures」が「ドリーム」と翻案されて議論になったが、日本語オリジナルのタイトルそれ自体は、映画の世界観を言語を超えて押し広げる可能性を秘めているわけで、決して排除されるべきではないと思う。


同じことを、吹き替え版にも思い始めている。一部の声優、俳優は、ハリウッド俳優に負けず劣らずのプロフェッショナルだ。そのプロたちが、母語であることばで、単なる翻訳以上の表現をしてみせる。そういう仕事にもっと触れたいし、単純に比較もして楽しみたい。質の高い吹き替え版を、もっともっと観ていきたいと思う。


追記
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